2008年11月15日土曜日

大相撲

小さい頃、夕方のお楽しみはテレビの大相撲中継だった。白黒テレビに向かって「たいほ~!」だの「かしわど~!」だのと叫んでいたものだった。ちなみに節操がないことに、私は交互に大鵬と柏戸のファンになっていた。

その後ずっと、大相撲に興味を失っていて、若貴の時代にもそれは変わらなかったのに、なぜだか去年くらいから時々大相撲中継を見るようになった。朝青龍なんかも結構好きだが、やっぱり正統派で押出もしっかりしている白鵬の魅力の方が一枚上だ。だから、かわいがりだの八百長だの大麻疑惑だのと言われていても、今場所も5時過ぎになると大相撲中継にチャンネルを合わせてしまう。

で、この頃のお楽しみが客席だ。取り組みを見るのももちろん面白いが、ちょっと前の名古屋場所だっただろうか。連日東の花道の脇の同じ席に同じ女の人が座っていることに気が付いた。ちょっと年増で、こんなことを言うのは申し訳ないけれど別に美人でもない。なのに顔を覚えてしまった。なぜ記憶に残ったのかは分からないけれど、この女性、和装なのだが、毎日お召し替えでとても衣装持ち。そのうちに「今日はどんな着物かな~」と楽しみになってきた。

その次の場所では、金色の日の丸模様の帽子をかぶったおじさんが連日向こう正面の同じ席に座って、勝負が白熱すると、同じ模様の扇子を広げて応援しているのが面白かった。

このおじさん、その次の場所にも姿を現していて、いわば追っかけなのかな。でも、枡席で追っかけをするとは相当のお金持ちに違いない。

そして今場所。日の丸おじさんはまたもや最初のうちは姿を現していたが、この2,3日は見掛けなくなっている。九州場所はなぜだか席ががら空きで、力士が気の毒になるほどだが、昨日は眼福ともいうべき光景を見ることができた。正面から見下ろす普通のカメラアングルでは写らないのだが、取り組みが始まって力士と同じ高さから平行に向こう正面を写すアングルだと、なんと少し上の枡席にずらりと黒紋付きの芸者さんが並んで座っているのが写るのだ。

きりっとした黒い着物に沿って真っ白な襟がVの字に見えてとても粋だった。もちろん白塗りにして日本髪である。まるで歌舞伎の総見を見ているような気分になった。よく見ると若い方から少しお年の方までいらっしゃるようだったが、総勢十名くらいいただろうか。誰かお大尽が気前よく芸者さんたちに枡席をおごったのかしらと想像すると、地球全体で金融危機だと騒いでいる不安な状況でも、なんだかとても華やかな気分になった。

この芸者さんたち、残り3番の大関と横綱戦になったとたんに一斉に席を立っていたようだ。いったんすっと立ち上がって長い裾をしゅっと引き寄せるところがちらっと写っていて、その次にその辺りが写ったときにはもう誰もいなかった。

芸者さんたち、毎日来てくれれば寂しい客席も華やぐのに...と思っていたら、今日はなんと満員御礼の札が下がっていた。

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