2008年11月22日土曜日

今日はジャッジII

なんだかNHKばかり見ているようだけれど、やっぱりNHKばかり見ているようだ(苦笑)。

今日はジャッジIIの最終回。NHKの土曜ドラマは結構質が高い。これまでも、ハゲタカ、フルスイング、トップセールス、最初のジャッジ、監査法人、上海タイフーンなど、ちょっと考えるだけでも五本の指では足りないくらいの名前が出てくる。見始めは期待していなくて、見ているうちに面白くなって来週が待ち遠しくなるドラマが多い。そう言えば星空ホスピタルなんかも好きだったなぁ。

そしてジャッジ。最初のジャッジが始まった頃、「島でただ一人の裁判官」という謳い文句で宣伝をしていて、なんだか退屈そうな番組だな~と思ったのだが、これが案外面白いドラマなのだ。

最初のシリーズは主に家族の再生がテーマだった。仕事一途の裁判官が家庭を顧みないで仕事に励んでいるうちに、肝心要の自分の家庭が壊れそうになっていて、ちょうどその頃親友の裁判官が不治の病に倒れ、彼の代わりに家族と一緒に島に赴くという話だった。これはこれでしみじみといい話だった。

大体南の海、島、人々、空気、風、空に南国風の音楽が流れると、もうこれだけで主人公一家ならずとも癒されてしまう。ドラマの内容は置いておいて、奄美大島や徳之島、与論島は「死ぬまでに是非訪ねたい場所」リストに堂々の仲間入りだ。

そして今回のシリーズ。家族は立派に再生している。うらやましいくらいの理想的な家族になっている。今回番組を見ていて特に印象に残るのが裁判官三沢の無言で考え事をしている場面だ。法廷で、執務室で、素晴らしい景色の中で、自宅で。最初は何とも思わず、何となく見過ごしていたが、徐々に裁判官という職業は実はものすごく丁寧に考える仕事なのだと言うことが分かってきた。

先週の話は嫡出子と非嫡出子の間の遺産相続を巡る話が中心だった。裁判官は法廷であっちの話を聞き、こっちの話を聞き、証拠として提出されているものを吟味する。法律は全くの門外漢で何も分からないが、裁判というのは最高裁判所の判例があると、その後の同種の裁判は最高裁の判断に従うものらしい。今回は司法修習生も来ていて、一人は渉外弁護士になるつもりだから、こういう島でのいかにも田舎臭い裁判にはほとんど興味がない。最高裁の判例もあるのだから、もう答えは出ているといわんばかりの態度だ。もう一人の修習生は裁判官になるつもりで、とりあえず勉強しようと言う姿勢はあるので、二人はまったく噛み合わない。相棒が嫌なヤツなので早く島での修習を終えたいということしか考えていないようだ。

だけど、裁判官三沢はじっと考える。途中、他の事件を裁くために余所の島にも出張する。そこでは成人後見人の指名を巡る争いごとが起きているのだが、三沢は誰もが見向きもしていなかった老女に正面から向き合い、一見無駄と思われる話し相手になってあげることで、老女の心の叫びを引き出すことに成功し、結果的に家族が忘れていた思いやりの心を取り戻すことにも成功し、自然争いごとにも決着が付く。

裁判官は決めつけてはいけないのだな~とつくづく思った。遺産相続争いでは、普段自分でもあまり見たいという気にならない家族の写真を三沢は丹念に一枚一枚見ていく。その中に誕生の時の写真があり、それらは故人が嫡出子にも非嫡出子にも同じようにお金を使い、同じように島の風習に則って、我が子の誕生を祝っていることが分かるものだった。三沢はそれらの写真を見つめ、この間まで壊れそうだった、今は強い絆で結ばれているという自信を感じる我が娘と自分のことを思いやる。

そのようによくよく考えて、裁判官三沢は最高裁とは違う判決を下す。子供は嫡出子であれ非嫡出子であれ平等に扱われるべきであるとする判決だ。

そうした三沢と一定期間を過ごすことで、修習生二人の姿勢も微妙に変わってくる。折悪しく不治の病に倒れた親友が亡くなり、島でただ一人の裁判官は親友の葬式に行くこともできないが、修習生二人に、自分と親友が司法修習で初めて知り合い、最初の悪印象から徐々に互いを認め合い、助け合い、なくてはならない存在になったことを言葉少なに語る。ああ、なんて素晴らしい...

刑事物のような派手なドラマではない。裁判官はじっと座っているだけだが、窓の外の真っ青な空と海。通勤時の道沿いの海と山。子どもたちが遊ぶ遠浅の海。こういう中でひたすら考える続ける裁判官の姿は本当にほのぼのとして、しかも頭が下がる真摯さが伝わってきて、毎回見終わるたびに深い感銘を受けている。

実際の裁判官の中にはストーカーがいたりするし、現実はあんな風に素晴らしい人生を送れるものではないかもしれないけれど、今までは困っている人を助ける弁護士と悪をくじく検事の間で、何となく地味な存在だった裁判官が私の中では大きくクローズアップされた。

今日はいよいよ最終回。ジャッジは最初のシリーズがあって、今回がIIだが、三沢は島での任期を今回のシリーズで終えてしまうようだ。IIIに続かないようなのがとても残念だ。

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